2021-05-23

所信表明演説原案・その4

ここからは、5つのテーマから離れて、5つの旗印についてです。締めは、冒頭で述べたメイスフィールドの言葉、それをすこしもじったものに戻るという構成にしました。ちょっと気に入ってます。

5つのテーマと共にあげたのは、「先進的であれ」、「挑戦的であれ」、「実験的であれ」、「オープンであれ」、「公正であれ」という5つの旗印です。先進的、挑戦的、というのは大学として当然のことです。三つ目の「実験的」について、少し説明します。

大学では、失敗を恐れずに先進的、挑戦的なプロジェクトに取り組むことが要求されます。私が従事してきた生命科学の研究と同じで、できるとわかっていることばかりやっていては進歩がありません。ですから、失敗することもあります。ただ、大学の運営を見ていると、これは失敗だったと明言することが少ないように感じています。それが大学をダメにしてきた理由のひとつではないでしょうか。失敗は失敗と認め、その理由をきちんと突き止めて次に活かす。そういった姿勢の重要性を「実験的であれ」という言葉に込めています。

四つ目と五つ目の、オープンであれ、公正であれ、というのは、表裏一体です。大阪大学は「ひらかれた大学」を謳っていますが、かならずしもそうなっていないと感じています。大本営発表のように、いいことは喧伝されますが、不都合なことは内部に向かってさえあまり明らかにされていないように思います。露悪的になる必要はありませんが、残念ながら、大学運営が厳しいことすら、構成員に確実に伝わっているようには思えません。

オープンであるためには、その結論にいたるために公正な判断がなされていなければなりません。意思決定プロセスを開示して納得してもらえれば、厳しい決断であっても、納得してもらえるはずです。また、逆に、公正な決定がなされていれば、なんら臆することなくオープンにできるはずです。

いろいろな問題に対して、本部と部局、部局同士、教職員同士、教員と学生、さまざまな単位とレベルでお互いに意見を出して話し合う。意見が対立しても、人格を否定するようなことなく、議論をつくして結論を出す。そして、結論が出れば、お互いが信頼感を持って運営する。そのための旗印として、挑戦的、先進的、実験的、オープン、公正、を掲げています。

最後に、ひとつ小道具をとりだします。ご存じでしょうか。チベット仏教で使われるマニ車と呼ばれるものです。中にお経がはいっていて、一回まわすとお経を一回唱えたのと同じ御利益があるとされています。僻地旅行が好きなので、ブータンやインド最北部のラダックへ行ったことがあるのですが、そこでは、日がな一日マニ車を回している人がいます。

ガイドさんに、皆が幸せになりますように、世界が平和でありますように、と祈っていると聞いて驚きました。この小さなマニ車をお土産に買ってきて、毎日、ほんの少しの間ですが、同じように祈りながら回しています。祈りが通じるなどとは考えていませんが、自分の気持ちが少しずつ、皆が幸せになりますように、世界が平和になりますように、と思うようになってきました。不思議なことです。

みなさんに、大阪大学は素晴らしい大学に変われるんだ、という気持ちを持っていただければ、そして、ちょっと空いた時間に、大学の改革に思いを馳せていただければ最高です。幼稚な発想と思われるかもしれませんが、ちょっとメンタリティーを変えるだけで、将来が大きく変わってくるのではないかと考えています。

「かわろう! 大阪大学」

私は、言葉の力を信じています。そして、それ以上に、みなさんの力を。

There are few earthly things more beautiful than Osaka University.

明るい活気あふれる大阪大学を築き、いつか笑顔で胸をはってこう言える日がくるよう、全力を尽くす所存であります。何卒よろしくお願い申し上げます。

ありがとうございました!

写真:タクツァン僧院@ブータン

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