2021-05-22

所信表明演説原案・その3

今回は学債の問題と女性教員比率30%の達成です。前者については、他の候補に比べて慎重な態度をとっています。逆に、後者については比較にならないくらい積極的です。「やればできる!」のところはちょっとティモンディ高岸のポーズをとって、にこやかにやったつもりなのですが、誰にも気付いてもらえなかったようです。ちなみに「すこしティモンディ高岸がはいってしまいましたが」は言う勇気がありませんでした。

お金といえば、学債のことに触れたほうがいいかもしれません。学債は補助金ではありませんので、返済可能なプロジェクトと一緒に考える必要があります。そうでなければ、架空の話になってしまいます。そういった点から、お二人とも学債のための具体的なプロジェクトをお話にならなかったのはすこし残念でした。もっと残念なことは、私自身、現時点ではそのようなプロジェクトを思いつけないことです。もちろん、学債を出さないということではありません。ひろくアイデアを出していただき、学債発行に相応しいプランができたら、発行したいと考えています。

ただ、そのような場合でも、なによりも、償還原資があるかどうか、きちんとお金を返せるかどうかは十二分に吟味するつもりです。後世に負債を残すようなことだけは絶対にすべきではありません。漠然と、学債が発行されたらなんとなく潤うというものではないか、と考えておられる方がおられるかもしれませんが、決してそうではないということは十分にご理解ください。

お金の話はどうも暗くなっていけませんね。つぎは明るいお話をしたいと思います。5つのテーマのうち最後、「あたらしい大阪大学へ」です。ここでは、ジェンダーギャップの解消を最大のポイントにしています。

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大学を改革する上で最重要課題にしているのは、女性教員比率30%の達成です。財政の問題、グローバル化、ジェンダーギャップの解消など、大学にはさまざまな課題がつきつけられています。どれも難しい問題です。しかし、その中で最も解消しやすい-外的要因に左右されず、自らの意思で解消することができる、という意味においてですが-その解消しやすい課題は女性教員比率の目標達成です。

というのは、クォータ制の導入、すなわち、アファーマティブアクションを取るかどうかの決断にかかっているからです。日本のジェンダーギャップ指数はG7で最下位どころか、世界120位というありさまです。ずいぶんと以前から、どの国立大学も女性教員比率30%を目標にしていますが、達成しているのは二つの女子大を含めごくわずかです。

達成すること自体が非常に有意義であることは間違いありません。大学が少し「美しく」なるはずです。それどころか、他にも波及効果がいくつもあります。ひとつは「やればできる!」。すこしティモンディ高岸がはいってしまいましたが、冗談ではなく、ひとつのことを成し遂げるという経験が重要だと考えています。

多くの国立大学が達成できていない理由のひとつは、みんなができていないという横並び感覚もあるとにらんでいます。なので、いつまでもできないのではないかと思っているのは、大学も文科省も、おそらく外部の人だってそうかもしれません。そんな中、旧帝大の中で大阪大学がトップを切って達成する。この意義は非常に大きい。大学は大学だけで成り立っている訳ではありません。「お、阪大やるやないか」と、社会に思ってもらえただけで相当なメリットです。イメージやブランディングというのは、単なる宣伝ではなく、こういったきちんとした成果がなにより物を言うはずです。

他の難題、講義の英語化であるとか、留学生比率の向上とか、は、どうしてできないのか。こういったことに対して、これまでのようになにもできないまま、というのと、ひとつできた後、というのは大きな違いがあります。ひとつやりとげたことから、他の問題の解決を妨げている要因はなにか、その要因を取り除くことができるのか。また、もし取り除けないのならハードルを下げるべきではないか、そういった議論につなげていくことが可能になります。

部局の抵抗が強くて実現不可能ではないか、と心配する方もおられます。はたしてそうでしょうか。決してそうは思っていません。まず、誤解のないように申し上げておきますが、全部局一律で30%ではありません。それは、もともと女子学生の少ない工学部などでは不可能です。だから、学生比率を十分に勘案しての30%です。誰もがジェンダーギャップを解消すべきだと考えておられるでしょう。そのような状況で、うちの部局だけは実行できない、などということがあるとは思えません。

ここで重要になるのは信頼です。この程度の相互の信頼がなければ、大学改革など夢のまた夢です。学生を信頼しようという話をしましたが、大学の運営にとって最も重要なことはお互いの信頼関係であると確信しています。

写真:キリマンジャロ頂上(5895m)での記念写真、左端の赤いのが仲野

 

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