2021-05-20

所信表明演説原案・その1

本日から4日間にわたって、5月19日におこなわれた大阪大学総長選考のための所信表明演説会でのプレゼン内容をアップします。録画が公表されていますが、学内限定で外部の方には見ていただくことができません。また、この原稿は原案であって、実際には、これを三分の二くらいに圧縮、そして、もっと口語的にしてお話しました

There are few earthly things more beautiful than a university.

イギリスの詩人、ジョン・メイスフィールドの言葉です。アメリカ合衆国・第35代大統領、ジョン・F・ケネディーが平和の戦略(The Strategy of Peace)という有名な演説の冒頭で引用したことから、有名になりました。詩人らしく、earthly=地球上の、というあまり聞き慣れない言葉が使われています。いきなりでしたし、発音もいまひとつだったので、聞き取れなかったかもしれません。もう一度繰り返します。

There are few earthly things more beautiful than a university.

地球上に大学ほど美しいものはほとんどない、とでも訳せばいいのでしょうか。この「美しい」というのは、もちろん外形的なことではなくて、大学の中味のことです。しかし、残念ながら、いまの日本で、胸を張ってこの言葉を言える人がどれだけいるでしょう。さすがにここまでは無理かもしれません。しかし、すこしでも、このメイスフィールドの言葉に近づきたい。そう考えて、今回の総長選考の候補者となることを決意しました。仲野徹です。よろしくお願い申し上げます。

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まず、大学を変えるには、総長選考から変えるべきではないか。そう考えて、旧来の総長選考における活動とは一線を画し、もっぱらネットからの情報発信をおこなうことにしました。そうして開設したのが、HP『かわろう! 大阪大学』です。

ここでは、所信表明だけでなく、そこで書き足りなかったこと。大学改革について、総長選考にむけて、それらにまとわるいろいろなこと、についてのコラムを、40日間近く、毎日アップしてまいりました。トップにあげているのは、京都精華大学のウスビ・サコ先生との対談を編集したYouTubeです。コラムなんか読むのが面倒とおっしゃる方は、12~3分の短いものなので、ぜひこれだけでもご覧ください。

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どうしてこのようなやり方を取ったか。まずは、もうこれまでおこなわれてきたようなドブ板選挙の時代ではないだろう、ということです。それから、いまの大学の状況を考えると、個人や専攻、あるいは部局での部分最適を統合して全体最適に持っていくのは難しい。なので、従来おこなわれてきたやり方、個別訪問や部局単位での懇談会、は、大学にとってあまり望ましい状況をもたらすとは思えません。それに、所信表明とちょっとしたプレゼンくらいで自分の思いの丈をぶつけることなどできません。だったら、すべてオープンにして、連日のコラムで自分の考えを詳しく発信していこう、と考えたのです。

このやりかたのひとつの問題は、どれくらい有権者に読まれているかがわからないことです。これは如何ともしようがありません。もうひとつの問題は、一方通行になりかねないということです。そのために、質問箱を設け、いろいろなことにお応えする、というシステムにしました。これまでに50以上の投稿をいただいております。中には嬉しいものもありました。

ある阪神間の中高一貫の受験校の校長先生からは、所信表明にあるような大学になれば素晴らしいとのコメントをちょうだいしました。もうひとつ、うれしかったのは。なんでも、京大を志望していた息子さんが、仲野が総長になるなら阪大にしようかと言い始めておられるという悩みの相談です。冗談だったらいけないので確認したのですが、本当です、ということでした。ありがたいことです。HPについてはこれくらいにして、所信表明の説明にはいらせていただきます。

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他のお二人の所信表明書に比べて、わたしのものには大きな特徴があります。まずは、見た目の地味さです。とはいえ、シンプルではありますが一言一句おろそかにせず、すべてを自分自身の言葉で、それも、読んでわかりやすく書けたと自負しています。

内容的にも地味に見えるかもしれません。しかし、どれもが、大風呂敷を広げることなく、自分の経験に基づいて考えた、お金をかけずに実行可能なことばかりです。その代表的なものを5つのテーマにまとめました。その5つとは、知の共有、教育の復権、若手大学人の育成、生産性の高い組織、そして、あたらしい大阪大学へ、であります。知の共有、および、若手大学人の育成、に関しましては、他の候補も似たようなことをあげておられます。ただ、テクニカルなところは多少ことなっています。

たとえば、知の共有ではインフォーマルな情報交換レベルから重視すべきではないか、ということ。それから、若手大学人の育成では、テニュアトラック制度を大々的に導入すること、そして、それをテコにして、タコ壺のような講座制から大講座制をめざせばどうか、といったところです。しかし、残りの3つについては、かなり独自の考えをあげていると自負しています。つぎは、それについて詳しくご説明申し上げます。

写真:仲野徹の本棚@紀伊國屋書店グランフロント大阪店

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