2021-05-03

大学は教育だ!

昨日(5月2日)の産経新聞に、拙著『考える、書く、伝える 生きぬくための科学的思考法』(講談社+α新書)の書評-凄腕ノンフィクションライターの河合香織さんによる書評-が掲載された。瞬く間にアマゾンの順位が急上昇!ありがたいことだ。この本、昨年の春・夏学期に開講した、新入生向け『学問への扉 健康と医学について考えよう』の記録である。

マチカネゼミ」というゼミなのだが、新入生が必修なので、かなりたくさんのゼミが必要になる。そのために、教員には義務として割り当てられる。健康や医学からトピックスを選び、それについてのデータを集め、プレゼンをおこない、論文を書く、という内容のゼミにしたのだが、正直なところ、じゃまくさいなぁと思った。しかし、やるからには何事も楽しんでやる、というのが信条だ。気持ちを取り直して、自分も楽しめるようなやり方を考えた。そして、うまくいったら本にしようともくろんで開講した。

20名の応募に対して集まったのは14名。どうやら第一志望ではなくて振り分けられた学生も多そう。う~ん、あかんがな。コロナのせいでzoom越しでのゼミをスタート。なんとなく、大丈夫かいなこの子はという印象の学生もいた。そして、一回目のプレゼンと論文。やっぱり本にするなどというのは無理すぎるか…

と思った。ところが、指導を重ねるにつれ、信じられないほどよくなっていった。これには正直驚いた。コロナで暇だったせいもあったと思うが、みんな、ものすごく真剣に取り組んでくれた。後から知ったところによると、授業時間以外にも、zoomとかで熱心にディスカッションしていたらしい。そんな進み具合だったので、途中からは、本にしたい、どころか、本にせねばならないとまで考えるようになった。

指導が奏功した、といえるかもしれない。しかし、そこまで自信過剰ではない。なによりも感心したのは、わたしが教えるよりも、学生同士で刺激を受け合う方がはるかに教育効果が高かったことだ。詳しいことは本を読んでもらうしかないが、たった3ヶ月あまりで、全員がこんなに良くなるとは夢にも思わなかった。

こういった経緯から、この本の最後は、ちょっとかっこよく「若者に、そして、教育に未来を見た」という言葉で結んだ。嘘偽りのない言葉である。所信表明にある「教育の復権」は、決して空論などではなく、この経験を元にした確固たるものである。

キラキラした目で入学してくる学生たちなのに、かなりの割合が次第に勉学の意欲を失っていく。学生に問題があると考えがちだが、それではダメだ。教育の問題だと考えなければならない。研究や社会活動、資金稼ぎも大事かもしれないが、大学は教育が本分である。教育を最大の目的にせずにどうするのか。

記憶せずとも、情報は外付けできる時代になった。知識を教え込む教育は完全に時代遅れだ。この本で繰り返し紹介した言葉がふたつある。ひとつは、アルバート・アインシュタインのもの。

教育とは、学校で学んだことをすべて忘れたあとに残るものをいう

大学時代は、考え方や学び方を身につける。知識は古びるが、そういった方法論は一生ものになる。もうひとつは、科学史家・山本義隆のことば。

専門のことであろうが、専門外のことであろうが、要するにものごとを自分の頭で考え、自分の言葉で自分の意見を表明できるようになるため。たったそれだけのことです。そのために勉強するのです

こんな教育をする大学にならねばならない。これが候補者になる決意にいたった大きな理由のひとつである。ここで教育を受けたいと高校生が押しかけてくる。そんな大阪大学にするのが、大阪大学を改革するのと並んでの大きな夢だ。

どういう教育をめざすかについては、他のことも含めて後日あらためて書くつもりにいたしておりますので、しばしお待ちを。

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この本の内容の一部が、
「学問への扉」を名物教授がリアル講義!「もう一度学びたい」あなたへ
名物教授・仲野徹の知的なワザを磨いた名著4冊
シンプルイズベスト! プレゼンが見違えるほどよくなる3つのノウハウ
科学的な考え方でプレゼンや論文に強くなる! なぜ、できるだけ単純に考えるといいのか?
社会人必須のプレゼンや交渉力が、“考え方を変えるだけ”で劇的にUPする!
というタイトルで、5にわけて『現代ビジネス』にアップされています。ご興味おありの方はお読みいただけたらうれしいところです。もちろん、お買い上げいただけたらもっとうれしい。

写真:書影と産経新聞の書評

 

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