2021-04-23

新しい学部の設置について:上

「少子化の中で生き残れる大学とするために、情報、量子、環境、SDGsなど、これから必要、あるいは若い人に人気のある研究をやっている事がわかる名称の学部を設置するという考え方があるようですが、それについてどのように思われているかお聞かせ下さい。」というご質問をいただきました。大学のリモデリングを考える上でとても大事なことなので、ここでお答えいたします。

1949年の新制大学発足以来、大阪大学において学部が新設されたのは、1951年の歯学部、1955年の薬学部、1961年の基礎工学部、そして、1972年の人間科学部が最後である。以来、半世紀近くおこなわれなかったのは、学部をあたらしく設置するのは相当な大仕事だということも関係しているのだろう。それでも新しい学部を設置するというのなら、なにを考えなければならないか。

歯学部、薬学部といった旧来からある学部だけでなく、基礎工学部、人間科学部という新しい概念に基づいて作られた学部が大きく発展したことは、大阪大学が誇りとするところである。結果論ではあるが、これは設置の理念が優れていたからに他ならない。

ご質問いただいた「新学部」は学際的な性質が強いので、設置がボトムアップで提案されるとは考えにくい。必然的に大学執行部からのトップダウンになるだろう。国立大学法人の現状を鑑みると、学部が新設されるとしても、教員数の純増など望むべくもない。既存の学部から教職員の配置換えをおこなっての設置とならざるをえない。当然、教職員を召し上げられる学部はデメリットをこうむることになる。

一方で、無理をして小規模な新しい学部を作ってしまったような場合、その学部の教員のみで学生の教育・実習を満足にできるかという問題も生じかねない。新学部での教育負担が大きくなりすぎて、構成員の研究がおろそかになるようでは何をしているのかわからない。

逆に、大規模な学部にすると、こんどは引き抜かれた側の部局の学科や専攻における教育が成り立たなくなるというリスクが生じる。教員兼任で切り抜けることも考えられるが、これも個人に大きな負担を強いるのはいかがなものか。こういったデメリットまで含めて、関連部局が納得できるかどうか。逆にいうと、執行部が同意を得ることができるかどうかにかかってくる。

相当な努力と時間を要するだろう。それに、所信表明で書いた5つの旗印のうち「オープンであること」と「公正であること」を徹底しながら議論する必要がある。新学部設置のメリットと、関連部局のデメリット、設置にかかる膨大な労力、新学部において生じうる新たな問題などをあわせて、本当に大阪大学全体のためになるのかどうか。単なる時流や思いつき、ましてや特定の個人の名誉欲などではなく、公明正大な大局観が必要だ。

運営の旗印のひとつに「実験的であれ」ということを揚げているが、学部の新設に当てはめることはできない。一旦作ると、50年とはいわずとも最低でもその半分の期間は継続させねばならい。拙速などもってのほか、十分すぎるほどの検討が必要だ。

と書くと、仲野は、学部新設のようなリモデリングなどやる気がないのではないかと思われるかもしれない。決してそんなことはない。設置の理念が素晴らしく、大阪大学の発展に必要で、妥当な計画であれば、関連部局は納得してくださるはずだ。そうであれば、設置に向けて全力を尽くす。

そして、もうひとつ、別のやり方も可能ではないかと考えている。それは次回に。

写真:穂高岳・涸沢の紅葉

関連記事

コメント1件